曹源寺も猫寺
いつの頃か、時の曹源寺住職が可愛がっていた一匹の猫がいました。
人の言葉やお経もわかるようになった猫は、お盆の時期、夜な夜な住職の袈裟を着てこっそり寺を抜け出し、村の盆踊りに加わっていました。
それに気がついた住職は「お前を可愛がってきたが、そのようなことをするようになっては、もはやこの寺に置いておくわけにはいかない」と猫を諭しました。
しばらくしたある晩、猫が住職の夢枕に現れ、「近々葬儀があるだろう。その時に私の力で嵐を呼び棺を持ち上げる。すると参列者は驚くだろうが、住職がお経を唱えていると嵐が止み棺は静かに戻る。」と言って消えました。
翌日、住職が変な夢を見たと思っていたところに、檀家の方が亡くなられたという連絡を受けて驚きました。
葬儀が始まると本当に嵐が起こり棺が空高く舞い上がりましたが、それでも住職が猫のお告げ通りお経を唱え続けると空は晴れ、棺は静かに元に戻り、無事に葬儀が終わりました。
猫の恩返しにより、住職の名は広まり、檀家が増え、曹源寺が栄えました。当寺にはこの猫の恩に対して造った猫足の経机がありましたが、天保11年(1840年)の火事で焼失してしまった、と言い伝えられています。